画像生成AIの解説では「描画したい内容をプロンプトに、描画したくない内容をネガティブプロンプトに記述する」と説明しているサイトが多いのですが、それならば、条件を厳しく絞っていけば思い描いた内容をそのまま出力できるはずです。
しかし、実際にはプロンプトだけで制御するのは難しく、複数回実行することで想定した内容に近いものを選び抜いている方が多いのではないでしょうか。この記事では『画像生成AIに「椅子に座る人」を正しく描かせるには？』をテーマに、ネガティブプロンプトについて解説したいと思います。
プロンプトはAND検索？OR検索？
画像生成AIのプロンプトは一見「AND検索」のように見えます。たとえば、「座っている少女」を出力したい場合は以下のプロンプトで実現可能です。
1girl, sittingこのプロンプトでは、「１人の少女」と「座っている」という複数の条件を満たす画像を出力します。
しかし、モデルの内部では「トークンの連想性」や「確率的な分布」によって、関連するさまざまなイメージが浮かび上がっており、その中にはOR的な要素も多分に含まれています。そのため、”sitting”を指定しただけでは、モデルは「地面」「草」「ベッド」「階段」など、あらゆる場所に座っている人物を生成する可能性があります。
プロンプトの出力結果がAND検索のように見えるのは、重複した内容が存在する場合に、確率的な分布が上がることで「出やすくなる」ためであり、プロンプトによって参照したデータにはAND検索に合致していない部分も含まれていることを理解しなければなりません。
今回、選択した”sitting”には椅子以外に座っているデータも含まれているため、椅子に座るという状態をより正確に再現するには、以下のようなネガティブプロンプトを設定することが有効です。
floor, ground, bed, cushion, grass, stairs, rock, yoga pose, kneeling, squatting, floating, benchこれらはすべて「椅子以外に座る」状況を生む可能性のある要素です。ネガティブプロンプトとして除外することで、モデルが椅子を選択する確率が上がります。
“on a chair” を追加すれば解決？
先ほどのプロンプトでは「座っている少女」が出力されましたが、「どこに座っているか」の指定はしていませんでした。今度は「椅子に座っている人」を出力するためにプロンプトを以下のように書き換えます。
1girl, sitting, on chair
”sitting”のデータには椅子に座った状態も含まれていますが、追加で”on chair”を記述することにより、椅子に座った人が出力される確率を高めることができます。
一方で、”on chair”のデータを参照したことにより、以前とは異なるデータにアクセスしていることには注意が必要です。「1girl」「sitting」「on chair」という異なるデータにアクセスすることで情報量は増えていますが、同時に、描画に使用しない不必要なデータにもアクセスしていることになります。
ネガティブプロンプトでは、モデルの学習データから描画に必要なデータを制限することによって、画像生成AI利用者が想定している出力結果に近づけるようコントロールすることが可能です。
ネガティブプロンプトは「データの除外設定」
各サイトで解説されている「描画されたくないものはネガティブプロンプトに記述する」という方法は間違いではありません。しかし、各プロンプトには概念形成時に使用された余分な学習データが含まれており、使用する際には除外設定を利用することで、より正確に想定通りの内容で出力できることも知っておくとよいかもしれません。
矛盾したプロンプトを使用していないにもかかわらず、プロンプトの効きが悪かったり、想定外の内容や崩壊した内容で出力されたりする場合は、ネガティブプロンプトで描画されたくないデータを使用しないよう設定しましょう。
