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自宅サーバーは燃えるのか

メモ
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とあるブログで「ノートPCをサーバーにして大惨事になった話」が紹介されています。それを基にネット上には「自宅サーバーを立てるならノートPCはやめとけ」と書いているブログも多くあります。

ですが、実際に自宅サーバーを立てたことがある人や、PCを24時間ずっと稼働させている人からすると内容に疑問が残る記事ではないでしょうか。

そこで実際の事例を基に自宅サーバーは燃えるのかどうか検証してみたいと思います。

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結論:基本的には燃えない

大量のサーバーを扱うデータセンターでは超高感度の火災検知システムに加えて、万が一に備えてスプリンクラーなどの消火設備や窒素ガスを使用した消火機器を備えているわけですが、サーバー自体が出火しやすいかというとそうではありません。

電気を使用する以上、燃える可能性はゼロではありませんが、メーカー側もそれを前提として燃えない設計をしており、サーバーやパソコンに使用されるCPUやマザーボード、メモリなどのパーツは出火しないように設計され、製造が行われています。

そうした設計によってデータセンターが一般家庭の数百倍~数千倍の規模でサーバーを常時稼働させても火事になっていない状況を踏まえると、たった1台サーバーを動かしただけで火事になるとは考えづらいわけです。各家庭に1台、会社では個人に1台パソコンがあっても、そのほとんどが燃えていないと考えると想像しやすいかもしれません。

CPU周りに溜まったホコリがショートする?

今回参考にしたブログによると、火災の原因は「サーバーとして使用していたノートPCのCPU周りにホコリが溜まりショートした」というものでした。また、「パソコンによる火災は東京だけで10件以上ある」としています。

東京消防庁のデータによると件数については毎年概ね10件以上あるものの、基盤部からの出火はほとんどありませんでした

また、「自宅サーバーがよくある出火原因のひとつ」と記述されていますが、東京消防庁では「コンピュータ(本体)」としてまとめられており、自宅サーバーがよくある火災原因とは確認できませんでした。

ノートPCは火災の原因になるか

火災につながる原因として

  • 24時間使い続けるという想定がされていない
  • ノートパソコン自体が高熱になりやすい
  • 電源アダプタが弱い
  • ホコリが溜まりやすい

の4点が挙げられていました。

24時間使い続けるという想定がされていない?

PCの構造から申しますとデスクトップでもノートでも構造は一緒です。そして使用されているパーツに関しても規格の違いはあれど、耐久性その他はほぼ同じです。

バッテリー駆動での使用時間を考慮して消電力CPUを搭載することで性能が低くなることはあっても耐久性に差が出ることはまずありません。

どこにでもノートPCを持っていき、撮影データを管理、動画作成を行い、エンコードで書き出すという流れで1日中使用することもあるでしょうし、寝ている間に動画を書き出す人もいれば、複数人で同じPCを使用していることもあることでしょう。現代ではノートPCだけで仕事を完結させるユーザーもたくさんいます。

今回紹介した記事が書かれた時代とは背景が異なるとはいえ、少なくとも現在では製造時にメーカーが24時間以上連続で使用することを想定していないとは考えづらいです。

ノートPC自体が高熱になりやすい

これは半分正解ですが半分は間違っています。

正しい点として、ノートPCではその携帯性と引き換えに排熱機構に制限があります。デスクトップのような大きなファンを搭載することができず、ノート用の薄く小さいファンを使用してCPUを冷却しています。

しかし、問題なのは「10時間であれば問題ないが、24時間休みなく動かすと熱が溜まり続ける」としている部分です。

PCの設計・製造においては「CPUの発熱よりもファンの冷却性能が高いこと」が絶対条件となります。設計においてファンの冷却性能が足りない場合はより発熱の少ないCPUを選ぶことになります。

つまり、メーカーが設計する際にはCPUの発熱量よりもファンの冷却性能の方が大きくなるため、基本的には24時間以上連続で稼働させても設計上は問題ないはずです。

ソフトウェアで電力制限をかけることもできますが、性能をフルに発揮できないCPUを乗せても製造コストだけが高くなってしまうため、わざわざ発熱の多いCPUを選ぶことはないでしょう。

バッテリーでの駆動を考慮すると多くの場合では省電力CPUを使用することとなり、IntelやAMDもノートPC用のCPUを販売しています。これらを使用する場合にはノート用のCPUファンでも十分な冷却が可能です。

また、CPUにはサーマルスロットリングという機構がありますので長時間の動作で熱が溜まり続けることはありません。

ホコリに引火して自然発火?

今回参考にしたブログには「一定の熱量を超える小さなホコリなどに引火し自然発火する」との記述がありますが、現在のCPUには一定の温度を超えた場合には冷却が追いついていないと判断して性能を落とす安全装置が備わっています。これがサーマルスロットリングです。

ホコリに引火して自然発火する前に、CPUの性能を落として温度を下げる機構が働くので埃に引火して発火することはありません。多くのCPUではサーマルスロットリングは100℃前後で発動するようになっています。

対して、繊維ボコリの原因である成分の発火温度は一番低い綿でも260℃です。ナイロンやポリプロピレンは融点が160℃となっており、サーマルスロットリングが起きるよりも高い温度にあります。

「ホコリ」とは何か | 開発研究所 | 株式会社ダスキン
ダスキン開発研究所の「ホコリ」とは何かです。
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「ウールのニッケ」から“人と地球に「やさしく、あったかい」企業グループ”へ。ニッケグループは共通の経営理念・経営方針で統一された事業複合体です。

では「サーマルスロットリングが発動しても温度が下がらない場合はどうなるんだ?」と思われる方もいるかもしれませんが、サーマルスロットリングが発生しても温度が上昇し続ける場合にはPCが強制的にシャットダウンされます。これもCPUによって異なりますが100℃~110℃くらいです。ホコリが発火する温度まで上がることはありません。

ちなみにサーマルスロットリングですが、調べたところ2007年秋冬モデルのノートパソコンに搭載されているのが確認できました。

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全機種で冷却ファン搭載となったLet'snote。今回は最新モデルの中から2スピンドルモデルの「W7」を選び、旧モデルの「W5」と温度や静粛性を比べた。

元の記事がいつ頃の話なのかについては記載がありませんが、インターネット回線の普及や自宅サーバーとして運用できるレベルを考えると、IntelならPentium 4~Core 2 Duoあたりでしょうか。その頃にCPU側で熱管理がされていなかったとは考えづらいです。

電源アダプタが弱い

「アダプタが故障しているのに使い続けるとショートしてしまい火災になりやすい」という点については間違っていません。東京消防庁の資料でもパソコンによる火災の原因は「短絡」、つまりショートが多くを占めています。

一方で、電源アダプタは電気用品安全法の対象となっていますので、PSEマークが記載されている場合においては通常使用の範囲では問題がなく、安全性が確保されていると言えます。

古くなっている場合は買い換えを推奨しますが、ネットで安く売っている物の中にはPSEマークがありながら認可を受けておらず、単に印刷しただけのシールが貼ってあるものも存在するので、購入する際は気を付けましょう。

ホコリが溜まりやすい

先ほど記述しましたが、ホコリ自体はCPU周辺に溜まったとしても火災の原因にはなりません。デスクトップでもノートでもホコリが一切入らないようなフィルター処理を行わないのは基本的にそこからは出火しないからです。

むしろ、気を付けるべきなのはコンセントの差し込み口です。コンセントと電源プラグの間に溜まったホコリに湿気が加わることで、電源プラグの刃の間に電気の通り道が作られ、放電、出火します。これを「トラッキング現象」と呼びます。

トラッキング現象 - プラグ・コンセント・コード|中部電力パワーグリッド
トラッキング現象。中部電力パワーグリッドのホームページです。良質な電気を安全・安価で安定的にお届けし、地域・社会の発展を支えていきます。

いつも同じ位置でPC作業を行っているとコンセントは差しっぱなしなんてこともあるでしょうが、半年に一度でもいいのでコンセント周りにホコリが溜まっていないか確認するといいでしょう。

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東京消防庁の資料から見る火災原因

基本的には燃えないと言いましたが、それでもパソコン火災は実際に年10件以上あります。それぞれ何が原因だったのか直近5年分の資料を基にして実際の火災原因を見てみましょう。

東京消防庁 電子図書館
『火災の実態』 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-cyousaka/kasaijittai/index.html

電気設備機器による発火源と経過 – コンピュータ(本体)

平成30年令和元年令和2年令和3年令和4年
電線が短絡する1010211013
金属の接触部が過熱する1
トラッキング2311
過多の電流が流れる1
絶縁劣化により発熱する111
誤ってスイッチが入る1
スパークする2
構造が不完全である2321
不明1
合計1515261418

電気機器の部位別の火災状況 – コンピュータ(本体)

平成30年令和元年令和2年令和3年令和4年
充電部7819811
差込プラグ24544
電源コード2223
基板部11
器具内配線2
その他の電気器具部分111
合計1515261418

PCが原因となった火災のほとんどは電源の短絡、ショートによるものです。部位別に見ると充電部が原因となっている割合が多いので「自宅サーバーにノートPCを使用するな」とする指摘は間違っていないのかもしれません。

それでもCPUは燃えない

先ほどの資料で見ていただきたいのは基盤部からの発火は年1回あるかどうかという点です。今回参考にしているブログではCPUが原因としていますが、それはレアケースであるということです。

今回用いたのは東京消防庁のデータですので全国規模では詳細な件数は把握できていませんが、人口比で考えた場合でも全国で13件ほどでしょうか。

昨年のPC出荷台数が1123万4000台であったことに加え、PCの法定耐用年数が4年であることを踏まえると、全国では約4500万台のPCが稼働していると考えられます。

国内PC出荷台数シェア 3位「デル」、2位「日本HP」、1位は?
MM総研は、2022年度の国内パソコン出荷台数に関する調査結果を発表。出荷台数は1123.4万台(前年度比4.4%減)で2年連続で減少した。

充電部からの火災が多いのは事実ですが、今回参考にしたブログのようにCPU部分から出火するケースは確率的にかなり低いのではないでしょうか。

実際には4500万台の他に法定耐用年数を超えたPCも稼働しているわけですので、CPU部分から火災につながる確率はほぼゼロだと言っても問題ないでしょう。

CPUやマザーボードの設計や製造において不備があり、CPU部分が焼損場合もありますが大規模に出火するというケースはあまりありません。こういったケースではすぐに製品が回収されています。

CPUが焦げるとこんな感じ↓

Ryzen 7 7800X3DやRyzen 9 7950X3Dが焦げて死亡。ASUS製マザーボードで発生。AM5ソケットも焦げる | ニッチなPCゲーマーの環境構築Z
AMD Ryzen 7 7800X3DやRyzen 9 7950X3Dなどの3D V-Cacheモデルと、ASUS製マザーボードとの組み合わせで、CPUとマザーボードが死亡すると...

マザーボードが焦げるとこんな感じ↓

ASUS、ROG MAXIMUS Z690 HEROを約1万台リコール。発火により火災の危険があるとして | ニッチなPCゲーマーの環境構築Z
ASUS製マザーボード『ROG MAXIMUS Z690 HERO』からの発火により、火災の危険があるとして、米国消費者製品安全委員会(CPSC)から同製品のリコールがアナウンス...

問題のマザーボードについてはコンデンサーが逆向きに取り付けられたことが原因で、使用状況によるものではありません。

当該品は火災の危険性があるとして回収されていますが、逆に言えばメーカーも出火の可能性があることを認識しており、出火しないよう設計しているということでもあります。

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なぜレンタルサーバーやVPSを借りるのか

「出火しないのであればわざわざお金を出してレンタルサーバーを借りなくても自宅サーバーで十分では?」とお考えの人も多いと思いますが、レンタルサーバーVPSを借りるのには相応の理由があります。

安定性

趣味でゲームサーバーを立てたり、NASとして活用したりする分には好きなタイミングでサーバーをオンオフすることも可能ですし、PCへの負担もそこまで高くはありません。

しかし、ゲームサーバーやWordPress、ウェブサービスなど不特定多数がアクセスするような環境では自分のタイミングで電源をオンオフすることが難しくなります

アクセスが増えるにつれて処理性能が求められるようになり、サーバーのアップグレードが必要になりますが、それにはCPUや周辺パーツを含めて数万円の出費が必要になります。ノートPCなら丸々買い換えることになるでしょう。

それに停電になった場合に備えてUPSを購入したり、移設が必要になったときのために電源構成を考えたりする必要もあります。ノートPCであればバッテリーを活用することも可能ですが、それでも使用できる時間は限られています。

その点からすると、レンタルサーバーVPSなら電源構成も考える必要がなく、処理性能のアップグレードもプランの変更だけで済むというわけです。SSDやHDDなどの消耗を気にする必要もありません。

電気代

「月々1000円の出費」と聞くと気が引ける人もいるでしょう。しかし、実際に運用してみると分かるのですがPCを1ヶ月つけっぱなしにすると1000円かかります。本当はもっとかかります。

一般的なノートPCで運用すると消費電力は1時間あたり20~30Wほどです。24時間使い続けると480~720W。30日で14.4~21.6kWとなります。1kWhあたり30円で計算すると432~648円でしょうか。

「ならこっちの方が安い」というのはもちろんそうなのですが、実際にはバッテリーやSSDなどの消耗を考慮する必要があります。少なく見積もって5年間で1万円と考えると、ひと月あたり166円ほどかかります。これで電気代と合わせて、ひと月あたりの合計は598~814円です。

「まだこっちの方が安い」というのも分かりますが、実際には5年経つとノートPCを買い換える必要が出てきます。そうなると5万円はかかります。古くなったPCをサーバーに流用するならいいのですが、自宅サーバーを立てるためにPCを買うというのはオススメしません。5万円あれば5年は借りられます。

例:Xserver VPS プラン2GBの場合 50760円(830円×36ヶ月+870円×24ヶ月)

5年運用を前提にするとPC本体と電気代で約75000円。そう考えると電気代も消耗品費も考えずにサーバーが使用できてひと月あたり1000円前後というのは悪くない気がします。自宅にサーバーを立てる必要がないのであれば借りた方が圧倒的に安いです。

セキュリティー

安定性や電気代よりも大切なのがこれ。ゲームサーバーやWordPress、ウェブサービスを運用するのであればセキュリティーの部分はプロに任せて自分は運用に専念することをオススメします。

というのも、サーバーは個人で使用するPCのように侵入を許さなければ守れるものではなく、常に不特定多数がアクセスしてくることを前提に考えなければならないので負担が大きくなりやすいです。

非公開部分へのアクセスを試みたり、大量アクセスをしてきたりというのは日常茶飯事なのですがそれに対してひとつひとつ対処していくのは大変です。

特にセキュリティーを突破しようとしてくる人たちは、パソコンやサーバーに精通した人たちであることも考えておかなければなりません。

その点でレンタルサーバーやVPSは攻撃者からのアクセスを勝手に遮断してくれるので、サーバー運用以外の面倒な部分を任せることが可能です。

サーバーに詳しくないのであれば、セキュリティの部分はプロに任せた方が快適に運用でき、安心して利用できるのではないかと思います。

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自分に合ったサーバー選びを

「サーバーを構築してみたい」「本格的にサーバーについて学んでみたい」という気持ちがあるのであれば自宅サーバーがいいでしょう。好き放題やって壊れてしまっても立て直せばOKです。この記事で述べたように基本的に燃える心配も要りません。

もしそれ以外でサーバーを利用したいという人はレンタルサーバーVPSを候補に入れてみてはいかがでしょうか。安定性やセキュリティーの面から見ても料金以上に納得できるサービスが利用できるはずです。

自分の目的に合わせて、自分に合ったサーバーを立ててみてください。

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