スマートフォンでは年に1~2回ほど携帯キャリアやメーカー各社から新製品の発表がありますがiPhoneと比べてAndroid™はスペック比較が複雑で分かりづらいのが正直なところ。
見た目や値段で決めるのもいいと思うのですが、2~3年という長い期間にわたって使用するものですので、快適さを考慮すると少しはスペックについて考えるのもよいのではないでしょうか。
スペックを上げ続ける必要はなくなった
「遅い・重い・電池の持ちが悪い」というのはスマホ黎明期を経験した人には心当たりがあるでしょう。モバイル用のCPUなんて性能もそこそこで、バッテリーも今のように大容量ではありませんでした。
ですが、それでも新機種が出る度に少しずつ改良・改善されていくのが当たり前で、前の機種よりも性能の進化した高速なCPUを載せて、機種の重量を軽くし、バッテリーの容量は増やす。
買い換えれば常に最新機種のフラグシップという感じで、現在のスマートフォンと比べるとまだ形も定まってなく特徴的な製品が多くありました。
しかし現在ではCPUの成長は止まっていないにしても、昔のように機種変したからといって大きな変化があるかというとそうでもありません。むしろ、進化する部分が減っているが故に以前と比べると買い換えるタイミングが難しくなっているようにも思えます。
定期契約による大幅な値引きもなくなりハイエンドのフラグシップ機には手が出しづらい。手を出したとしても現在の性能はオーバースペック気味だったりします。
ですが自分にとって丁度いいスペックのスマートフォンを選ぶことができれば購入費用を抑えることは可能です。スマホの基本的なスペックであるCPU・RAM・ストレージを基本に考えてみましょう。
CPU
スマホに搭載されているチップはQualcommのSnapdragon、SamsungのExynos、MediaTekのHelioなどいくつかありますが、今夏は多くの機種で採用されているSnapdragonを基準に考えてみます。
Snapdragonには以下の種類があります。
Snapdragon | 400 | 600 | 700 | 800 |
---|---|---|---|---|
性能 | エントリー | ミドル | ミドルハイ | ハイエンド |
数字が大きくなるほど性能も上がりますが値段も上がります。なんとなく数字が大きいほど強いと分かっていればいいでしょう。
電話とメールだけならSnapdragon 400番台
400番台はエントリークラスのCPUです。上位CPUと比べると動作はモッサリしがちですが電話やメールなど基本的な機能を使うだけなら支障ありません。
性能と引き換えにはなりますが搭載機種は安く手に入ることが多いため「携帯として使えればいい」という人にはオススメです。
ブラウザやマップを使うならSnapdragon 600番台
600番台はメインストリーム向けのミドルクラスCPUです。性能と価格のバランスが取れており、基本的な動作だけであればモッサリとした感じも少ないためストレスなく使用することができます。
400番台では心許なかったブラウザやマップを開いた際の描写性能もきちんと満たしており、日常生活で使用する分には不満を感じる場面は少ないでしょう。
上位CPUと比較するとGPU性能が弱めでゲーム用途にはあまり向いていません。3Dグラフィックを使用したゲームがしたいなら選択するべきではないでしょう。
がっつりゲームをするならSnapdragon 800番台
800番台はハイエンドCPUです。搭載機種の価格は高いですが性能も抜群です。基本的な動作からゲーム描写まで全ての動作をきちんとこなします。
Snapdragon 888など最近のCPU性能であればどんな状況でもストレスなく使用できます。むしろゲームをしない人間からするとオーバースペック気味かもしれません。
高すぎる処理性能を生かして1億画質を超える高解像度の写真撮影が可能な機種も出てきています。
価格と性能のバランスをとるならSnapdragon 700番台?
元々Snapdragonは200・400・600・800というナンバリングでした。しかし800番台のハイエンドCPUでは性能が高いけれど価格も高い、メインストリームの600番台では価格は安いが性能が足りない状況が生まれつつありました。
そこで2018年に出来たのが600番台よりも性能を上げつつ、800番台の機能を一部取り入れたSnapdragon700番台です。
スムーズにブラウジングもできますし、800番台ほどではありませんがゲーム性能も良好。スマホをがっつり使う人にとって価格・性能のバランスがよいCPUと言えるでしょう。
RAM
Random Access Memoryの略称でCPU処理の際に一時的にデータを置いておく領域です。このメモリ容量が多いほど同時にいくつものアプリを起動しておけると考えておけばいいと思います。
RAM容量 | 4GB以下 | 6GB | 8GB以上 |
---|---|---|---|
同時起動の目安 | アプリ1つ | アプリ2~3つ | アプリ4つ以上 |
起動するアプリやタイミングなどの条件によって大きく変わるのですが、重めのアプリとの組み合わせでこんな感じでした。あくまで目安ですがこの程度の認識で大丈夫かと思います。
最低でも4GBは欲しい
Androidはシステムだけで2.6GB以上消費します。つまり4GBあったとしたら実際に使えるのは1.4GB程度で思ったよりも余裕がありません。
メモリ不足でアプリが起動しないという経験はありませんが、アプリを行き来しようとすると片方が落ちるということが頻繁に起きるのがRAM 4GB。
現在販売されている物の中ではSnapdragon 400番台を載せたエントリークラスのスマホに多いように感じますが、そのメインターゲット層は電話・メール機能を求めている方ですので同時起動の心配をする必要はないのでしょう。
できることなら6GB以上
スマートフォンでは2つ以上のアプリを使わないと物事が完結しないという場面が多々あります。ブラウザで調べていたお店を地図アプリで確認するなんて場面もきっとあるでしょう。
そういったアプリを同時起動する場合では4GBでは足りなく感じることも多いです。別のアプリを開いたら前のアプリが閉じていたなんてことが頻繁に起こるからです。
2つ以上のアプリを行き来できるとストレスがグンッと減りますのでなるべくメモリは多い方がいいです。閉じられたアプリを再び読み込み直す手間や時間を考えたらきっと納得できるはずです。
ハイエンド機では8~12GBも?
Snapdragonの800番台を搭載する機種ではRAMが8~12GBとなっていることが多いようです。これは3DCGを使用したゲームをプレイするときや、高解像度の写真撮影を行う際にメモリが重要となってくるからです。
そこにはメモリ速度などのスペックも関係してくるのですが、ひとまずメモリ容量は少なくとも8GB、多いものでは12GBほど積むようになってきています。
別にゲームも写真も必要ないという人にとっては無駄かもしれませんが、複数のアプリを同時に起動しても十分すぎるほどの余裕があるのはかなりの利点だと思います。アプリを使用する際に読み込み直す手間がなくなるだけで快適さは段違いです。
正直、PCでもRAMが8GBあるかないかってレベルなのでこれだけあれば十分すぎると言えるでしょう。
ストレージ
携帯キャリアやメーカーのサイトでは「ROM」として記載しているところも多いようです。これはインストールしたアプリや撮った写真を保存しておく領域です。
保存しておけるデータが多いに越したことはありませんが増えれば増えるだけ端末自体の値段も上がります。ハイエンド機ほど大容量であることが多いのですが、microSDを挿すことで容量を増やせる機種も存在します。
少なくとも64GBは欲しいところ
人によっては「電話とメールだけならそんなに必要ない」と思われるかもしれませんが、最近の機種ではエントリークラスの端末でも大抵64GBくらい載っています。写真撮る時に保存できる容量があるならいいかなと思っておいてください。
そもそも電話やメールといったデータでは1GBを埋めることすらできません。写真だって高画質設定で何千枚と撮らなければ埋まることはないでしょう。
アプリをたくさんインストールする人は注意が必要
写真で埋めることは難しいのですが、たくさんアプリをインストールする場合は話が変わってきます。
まだAndroid端末が出てきて間もない頃は端末自体の保存容量が少なく、アプリ自体もできる限りデータを圧縮してリリースされていました。
しかし近年ではストレージ容量が増えてきたこともあり大容量のアプリが増えてきています。特にゲームアプリではアプリ自体の容量は数百MB程度ですが、追加のダウンロードデータが数GBにも及ぶなど大容量化が進んでいます。
例として有名なゲームアプリの容量を調べてみました。
ゲーム名 | アプリサイズ | ユーザーデータ | キャッシュ | 計 |
---|---|---|---|---|
アズールレーン(ver5.3.10) | 2.02GB | 3.80GB | 0.00GB | 5.82GB |
ウマ娘(ver1.6.0) | 0.23GB | 7.92GB | 0.03GB | 8.20GB |
単位をGBに揃える関係で多少切り捨てましたが大体こんな感じです。この2つのアプリを入れるだけで14GBほど容量が必要となる模様です。
つまり、こういったゲームを複数インストールして同時進行する使い方を想定しているのであれば、インストールするための保存容量が多いことが第一条件となります。
インストール時の容量だけを気にしていると、いざプレイするときになって追加ダウンロード分の容量が足りない可能性があるので注意が必要です。
できれば128GB以上?
ミドルからハイエンドクラスの機種では128~256GB程度のストレージを搭載している機種が多いようです。
これだけの容量があれば、CPU性能を生かして多くのゲームをプレイすることも、向上したカメラ性能で高解像度の写真をたくさん撮影し保存することも可能でしょう。
しかし、いくらゲームアプリが大容量化しているとはいえこの容量を使い切ることは簡単ではありませんし、高解像度の写真を保存するにしても容量が足りなくなるとは考えづらいです。
「同時進行させているゲームがいくつもある」「普段から高画質設定で撮った写真を溜め込んでしまう」など、ストレージを圧迫する癖がなければ大丈夫でしょう。それに余裕がある分には何の問題もありません。
また、もしいっぱいになったとしても写真であればPCや外付けHDDにも移動できますし、ゲームも本体容量がいっぱいであればmicroSDに移動させるという手段もあります。
128GB以上あるならそこまでシビアに考える必要はないでしょう。
カメラは?バッテリーは?
ここまでほとんど触れてきませんでしたがカメラ性能やバッテリー性能はあまり気にしなくても大丈夫です。もし気になるようでしたら展示されている機種で写真の試し撮りをしてみるのはいかがでしょうか。
僕は写真を撮る機会もそう多くはないので語ることもないのですが、「高解像度で1億画素」などこだわりがなければどのメーカーのどの機種も大体同じかとお思います。
バッテリー性能についても「○日間使えるバッテリー容量」みたいな話がありますが家に帰ったら充電するでしょう。1日使えれば十分です。
「綺麗な写真が撮りたい、バッテリー容量は多い方がいい」などこだわりがあるのであれば、自分の求めるスペックの中に含めて考えれば大丈夫です。
個人的に買い換えるスペックを考えるなら…
ここから3年ほど使うことを考えた場合のスマホのスペックは以下の通りです。
推奨スペック | |
---|---|
CPU | Snapdragon 780G以上 |
RAM | 6GB以上 |
ストレージ | 128GB以上 |
これは僕が未だにXperia XZ1を使用していて、それ以上の性能向上を望んでいないだけなので物足りなく感じる人もいるのではないでしょうか。
ちなみにXperia XZ1のスペックはこちら
Xperia XZ1 | スペック |
---|---|
CPU | Snapdragon 835 |
RAM | 4GB |
ストレージ | 64GB |
RAM 6GB以上を望むのは、上述したように4GBでは複数のアプリを同時起動した際に別のアプリが落ちるため。そしてそれを再び読み込み直すのが面倒だからです。
またストレージが64GBでも実際に使用できるのは55GB。現在40GBほど使用していますので残り15GB。これが128GBになれば容量を気にせず使えるのではないでしょうか。
Antutuベンチマーク(ver.9) | 総合スコア | CPU | GPU |
---|---|---|---|
Snapdragon 888 | 730000 | 195000 | 320000 |
Snapdragon 780G | 537000 | 161000 | 165000 |
Snapdragon 765G | 302000 | 98000 | 88000 |
Snapdragon 835 | 263000 | 83000 | 90000 |
※Snapdragon 888,765G,835:monolog 様よりベンチマーク結果を引用
※Snapdragon 780G:ReaMEIZU 様よりベンチマーク結果を参照
正直、CPUについては現状の性能で満足しています。これ以上の性能向上を求めようとも思ってません。僕個人としては昔ほどスマホを使う機会もなくなりましたし大抵のことはPCで事足ります。
Antutuベンチマークのスコアを基準にすればSnapdragon 765G程度の性能があれば十分です。しかし、この先2~3年にわたって使うことを前提にするならもう少し性能に余裕が欲しいところ。
Snapdragon 780Gほどのスペックがあれば数年前のハイエンド機や、ミドルスペックのスマホからの乗り換えでも大丈夫でしょう。何一つ不自由なく快適に使えるスペックとまでは言いませんが、日常生活レベルでは不便はしない程度のスペックにはなっているはずです。
理想は理想、現実は現実
スペックを求めるのは自由ですが実際に購入するとなると気になるのがそのお値段。
以前であれば割賦払いで月2000円ほど払えばハイエンド機が買えていましたが、通信料金の値下げとトレードオフで定期契約による端末代金の値引きが大幅に制限され、現在では月4000円ほど払う必要があるようです。
確かに月々の携帯料金は安くなりましたが、定期契約の更新と共に機種の買い換えをしていた人にとっては以前の料金体系の方がトータルでは安かった気がします。
端末の性能が向上していること、通信容量が増えたことを考えれば妥当と言えるのかもしれませんが、しかし月々の支払いが高くなるとなかなか手が出ないのが実情です。
いくら払えば手に入る?
先程、推奨スペックと称して自分の理想を詰めまくったわけですが、あの性能のスマートフォンを手に入れるには一体いくら必要なのでしょう。
現在発売されている機種でSnapdragon 780G搭載、RAM6GB、ストレージ128GBとなると今のところXiaomiのMi 11 Lite 5Gだけです。もう少し時間が経てば別メーカーからも似たようなスペックで発売されるとは思いますが、とりあえず調べて該当したのはこの1機種だけでした。
ちなみにMi 11 Lite 5Gのお値段は43,000円ほど。10万円を超えるハイエンド機種となるとなかなか手が出ませんが、このスペックで43,000円なら考えてみるのもありではないでしょうか。
お得に買うなら型落ちはどう?
新しいCPUが出るたびに性能が向上しているのは確かです。しかし「サクサク感が前の機種とは全く違う」と実感できていた黎明期の進歩と比べるとここ数年の進歩はそこまで大きくない気がします。
というのもモッサリとした動作でストレスが溜まるのとは異なり、性能向上によるサクサク感はストレスと無関係。一定以上の性能さえあれば、それ以上の性能向上についてはあまり気付かないものだったりします。
それを踏まえると最新機種より1つ前の機種へと買い換えるのも賢い選択ではないでしょうか。
5G対応かどうか
今ちょうど4Gから5Gへの移行期ということもあり買い換えの選択が難しい時期となっています。
現段階では5Gプランの料金は同じか少し高め。対応エリアもまだそれほど広くないなど使用にあたってのメリットは多くありません。しかし今後対応エリアが広がっていくのは明白です。
ハイエンド機なら最新のSnapdragon 888はもちろん、1つ前の世代でもSnapdragon 865で5Gに対応しています。
残念ながらミドルクラスからエントリークラスでは最新のCPUがやっと5Gに対応したばかりなので型落ちよりも最新機種を選ぶ方がいいかもしれません。Snapdragon 780GやSnapdragon 690,Snapdragon 480では5Gに対応しています。
まだ5G非対応でも大丈夫
ですが5Gに対応していなくてもお得感のある1つ前の世代を狙うのはありです。5Gが使えなくても4Gは使えますし、5Gが出たからといって4Gがすぐに終了するわけではありません。
2001年に運用が始まった3G回線が2026年まで運用されることを考えれば、2012年開始のLTEや2015年開始の4Gがすぐに使えなくなることは考えられません。少なくとも2026年よりは先になるでしょう。
現在ではまだ5Gの対応エリアはそれほど広くはありませんし、全国どこでも使えるようになるのはまだ数年先になると考えられます。5G非対応だからと4G端末を避ける必要はありません。
おそらく今4Gの端末に買い換えたとしても支障はないでしょう。5Gで悩むことになるのはその次の機種変を考える頃になるのではないでしょうか。
現在の通信速度に何の不満もない、5Gのエリアにも入っていないという方は4G対応のチップも選択肢に入れてみてください。
先進技術より自分に必要なスペックを
新しい製品の方が新しい技術が使われているのは当たり前なのですが、使用する際にその恩恵を十分に感じられるとは限りません。むしろ、以前のようなストレスを感じるような動作の遅さがなくなってきているだけにどれも同じように感じてしまうこともあります。
買い換えにともなう出費を気にするのであれば、前世代のチップが搭載されたスマホを買うというのは悪くない選択です。大切なのは性能よりも自分の使い方に合ったスペックかどうかです。
今も昔も「ハイエンドを買っておけば間違いない」のは確かですが、端末価格の高騰も含めて考えると必ずしも賢い選択とは言い切れなくなってきています。
スマホ買い換えのときによく考えなければならないのは、端末自体の性能ではなく自分の使い方ではないでしょうか。
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