2021年6月25日に発表された次世代Windowsである「Windows 11」。ウィジェットやゲーム機能の強化、Androidアプリが使えるようになるなど新機能が盛り沢山ですが、その一方で動作要件が厳しいために新しめのPCでも動作しないなど話題になっています。
個人的にも自分のPCがアップグレードできるかどうか気になったので色々試してみました。
Windows11のシステム要件
Windows11では64bit版のみのサポートという点も大きな違いですが、Windows10と比べるとシステム要件として求める最小スペックが大幅に上昇しています。
Windows10(64bit) | Windows11 | |
---|---|---|
プロセッサ | 1Ghz 以上のプロセッサ | 1GHz以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサ |
RAM | 2GB | 4GB |
ストレージ | 32 GB | 64GB 以上 |
システムファームウェア | UEFI、セキュア ブート対応 | |
TPM | TPM ver2.0 | |
グラフィックスカード | DirectX 9 以上 (WDDM 1.0 ドライバー) | DirectX 12 以上 (WDDM 2.0 ドライバー) に対応 |
ディスプレイ | 800×600 | 9インチ以上で8ビットカラーの高解像度 (720p) ディスプレイ |
システム要件としてはCPUにデュアルコア必須、RAMが4GBなど今の要件と比べると倍となるものもあり以前のアップグレードと比べて厳しいものとなっています。
ですがこの要件であれば7年前くらいのPCでもクリアしている物も多いのではないでしょうか。
最小要件となったUEFIとTPM
Windows11の発表の後、大きな話題となったのがTPM。PCに内蔵されているセキュリティチップを使ってOSやストレージとは独立して暗号化鍵を管理できるものです。
システム要件となっているTPM 2.0についてはIntelの第4世代Core(Haswell)以降でサポートされており、AMDもRyzenは対応しているので問題ありません。
Haswellを基準に考えれば、2013年以降に作られたPCであればWindows11にアップグレードできるということになるのでしょうか。
TPM 2.0を使用するには設定が必要
TPM 2.0がサポートされているからといって設定されているとは限りません。むしろ初期設定では外されていることが多いようです。
つまりWindows11を導入するためにはUEFI BIOSからTPM 2.0を利用するための設定変更が必要となります。この時点でハードル高めですね。
設定を変更してみる
普段利用する機会もないので特に設定していない方も多いのではないでしょうか。僕はしてませんでした。
AMDのシステムだとFirmware TPM(fTPM)と呼ばれているみたいですね。UEFI BIOSから設定の確認・変更ができるかと思います。
ASUS B350 F GamingではUEFIの「Advanced」タブの中にTPM設定ができる項目がありますので、初期設定の「Discrete TPM」から「Firmware TPM」に変更するだけで大丈夫です。
今のPCが使えるかチェックしてみる
Windows11の互換性チェックプログラムとして「PCの正常性チェック」というツールがMicrosoftよりから提供されています。こちらでTPMを有効化した状態で以下のスペックのPCで確認してみました。
スペック | 製品名 | Windows11 システム要件 |
---|---|---|
CPU | Ryzen 7 1700X | ○ |
マザーボード | AM4、B350 F Gaming | ○ |
RAM | 32GB | ○ |
ストレージ | M.2 SSD 512GB | ○ |
グラフィックカード | RX580 | ○ |
4年くらい前の少し古めのPC構成ではありますが現役で動作しているPCを使っての検証です。さて結果は…
ということでWindows11に更新することはできないようです。
設定変更だけでは動作しない可能性
「PCの正常性チェック」だけでは何が原因なのか判明しませんでした。噂によるとアップデートされて何が原因が分かるようになったという話もありますがそちらはまだ試していませんので分かりません。
ですが、さすがに原因不明のままではあれなのでWhyNotWin11を用いて具体的な問題について再度調べてみました
こちらを使用してみた結果、どうやらCPUが原因となっているようです。
第1世代Ryzenでは動かない?
それもそのはず。Windows11ではIntel 第8世代Core(Coffee Lake)、AMD 第2世代Ryzen(Zen+)以降のCPUサポートということで第1世代Ryzen(Zen)では引っかかってしまうのです。
しかし(実際にWindows11を試してみないと分かりませんが)第1世代Ryzenが動作する可能性はかなり高いと思います。
Windows10のシステム要件を見てもらえれば分かる通り、ここに載っているのはほんの一部のCPUのみです。実際にはここに記載されていないCPUでもWindows10は動作します。
Microsoftが提示している「Supported」ですが、あくまでMicrosoftがWindowsを提供する上で「互換性の確認が取れている」くらいに捉えた方がよいのではないでしょうか。
Windows10のシステム要件ではIntel 第5世代Core(Broadwell)以上が対象となっていますが、実際にはサポートされたプロセッサの一覧に記載のない第3世代Core(Ivy Bridge)i5-3337Uでも、第4世代Core(Haswell)i3-4130Tでも動作させることができています。
現時点で一覧に記載がないからといって動作しないとは限らないので、もし買い換えるなら動作検証を待ってからでも大丈夫だと思います。
検証に使用されたチップセットはX570か
Ryzenは全てAM4マザーボードを利用するため互換性があるのですが、実際にはチップセットの型番によって動作するものと動作しないものが存在するのです。
Windows11の最小要件にチップセットの型番を当てはめて見たのが以下の表です。
1700X | 2700X | 3700X | 5800X | |
---|---|---|---|---|
X370 | ○ | ○ | ○ | × |
X470 | ○ | ○ | ○ | ○ |
X570 | × | ○ | ○ | ○ |
Windows11 | × | ○ | ○ | ○ |
見て分かる通り、X570で動作するCPUとWindows11に互換性のあるCPUが合致しています。
最新のマザーボードによる検証の結果、X570番で動作する第2世代~第4世代(Zen+~Zen3)までは動作することが把握できているのでしょう。
第2世代が使えるなら第1世代も…
Windows11が第2世代Ryzen(Zen+)が動作するということはX470チップ、B450チップでも問題はないということになります。
しかし、X370からX470、ZenからZen+の違いはそれほど大きくありません。実際マザーボードを交換せずともBIOSの更新だけで大丈夫でした。その違いでRyzen第1世代(Zen)が動作しないとは少し考えづらいところです。
あるとすればPrecision Boost OverdriveなどZen+から使用されるようになった機能がOSの動作にどう影響するかという部分くらいでしょうか。
最小システム要件が緩和
Microsoftが2021年6月28日、Insider Preview版において第7世代Coreプロセッサーと第1世代Ryzenのシステムもサポートすると発表しました。
テスト用のシステムのため互換性があるとは言い切れませんが、とりあえず動作させることは可能なようです。
これなら現時点で確認が取れていないプロセッサーもシステム要件さえクリアしていればアップグレードできる可能性がありますね。
まぁ次世代Windowsが発表される度に今使っているPCが動くかどうかが話題となるのはよくあることです。
結局アップグレードする頃には大抵の問題は解決していて特に支障はなかったりします。慌てる必要も特別何か準備する必要もありません。気長に待ちましょう。